エルクヘアーカディス


 「あなたのパイロットフライは何ですか?」
 「あなたのお気に入りのフライはなんですか?」

 これらの質問で必ず1位になるのがエルクヘアーカディスさんですな。
 ただ単にランキングの上位に出てくるんじゃなくて、必ず1位って所からも、このフライの凄さがわかります。

 このフライの何がエエかと言うと、まず浮力ですな。
 鹿の毛で出来たウイングがものすごい浮力を持ってます。ちょっと濡れたぐらいじゃ絶対に沈みません。
 次に見易さですな。
 基本的に白いフライというのはかなり見やすいです。このカディス君も鹿の毛が白っぽくて、ものすごく見やすいです。
 で、最後に作り易さですな。
 材料は3つ、まずハックルをお尻に留めて、ダビング材でボディを巻いて、留めておいたハックルをボディーにぐるぐる巻き、これが足になります。で、最後に鹿の毛を付けて出来上がり。
 いわゆるエルクヘアーカディス(鹿の毛で出来たトビケラ)が完成するわけです。
 慣れたら1本5分足らずで巻けるんと違うかな。
 浮力、見易さ、作り易さの三拍子揃ったフライなんてなかなかありません。

 ところで、そのカディスことトビケラ君ですが、どんなやつかというと。
 こんなやつです↓

 これは成虫の姿なんですが、蛾みたいな形ですな。

 で、幼虫はこんな感じ↓

 通称クロカワムシ
 体液は超臭いです。
 地方によってはザザ虫なんて呼ばれて佃煮なんかにされちゃってます。
 僕は、よう食べませんけどね…

 当然水生昆虫なので、幼虫時代は水中で過ごします。
 どんな住処に住んでるかと言いますと、水中の石と石の間に蜘蛛の巣みたいな物を張って石をくっつけて、その中に住んでるんです。
 ちょっと綺麗な川ならいっぱい居ますからキャンプにでも行ったら、いっちょ水中の石ころをめくったって下さい。
 くっついた石ころをひっぺがすと、中から2〜5cmぐらいのクロカワムシ君が出てくるはずです。
 結構気色悪いですよ。


 さて、そのトビケラの成虫のつもりで作られたエルクヘアーカディスなんですが、私はフライしに行ってこの針を使わなかった日はありません。
 トビケラの羽化が無いときでも使いました。

 
「あ、#10ぐらいのストーンフライや!」
 「よっしゃ#10のエルクヘアーカディスや!」

 
「お、今日は#16ぐらいのメイフライが羽化してるやん!」
 
「そしたら#16のエルクヘアーカディスじゃ!」

ちょっと違うパターンのときでも…
 「#24ぐらいのユスリカやんか、ちっちゃいな〜」
 
「ほんじゃ、#24のCDCカディスじゃ」

 
「そろそろテレストリアルの時期やね」
 
「今日は孔雀の毛を下巻きしたカディスやな」

 サイズ合わしてるだけです。
 さすがに自分でもあきれますわ。
 いつも行ってる地元の川だとこれで充分釣れるんですが、たくさんの釣り人にいじめられた有名河川に行ったりしたら通用せんやろね〜

 でも、ほんと良く釣れるフライです。
 これ考えた人は表彰もんですな。

2000/2/13  CASL


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